2000年6月25日:TV観戦

 世界に一番近いと言われた選手が、いいところなく判定負けで世界タイトル奪取に失敗しました。
 西岡の試合は4〜5試合生で見てますが、その中で感じた主張のないボクシングというか、試合の中で何をしたいのかが見えてこない戦いが、一番大事な試合で出てしまったいう感じがしました。持っているものは,現在日本人世界チャンピオンの畑山や戸高に負けていないと思うのですが、今のボクシング・スタイルや気持ちで戦いつづけるつもりならば、何度やっても結果は同じだと思います。
 技術的なことを言えば、相手の正面に立ちすぎたのが最大の敗因でしょう。もし正面に立って戦うのであれば、もっと手数を出さなければ相手が攻めを防ぐことはできないのに、動いたといっても攻めるために動いたのではなく、防御のために動いただけであり、西岡のスピードに相手のウィラポンが多少戸惑いを見せていただけに、なぜ攻めないのかという気持ちになりました。サウスポーの特徴を生かして、右を引っ掛けて左を叩きこむというボクシングが出来ればウィラポンの出来がそんなに良いとは思えなかっただけに、大きなチャンスを迎えることが出来たように思えて中盤以降、見ていて苛立ちに近いものを感じました。今回の西岡のボクシングは挑戦者として世界タイトルを取るという気持ちを最後まで感じられなかった試合でした。結果はKO負けになったかもしれないですが、9R以降、しゃにむに攻めていくという姿を見せて欲しかったというのが多くのファンの偽らざる心境でしょう。30万円払っても価値のある試合をすると言っていた選手の試合ではありませんでしたね。こういう試合は、評価が分かれると思いますが、私は善戦したとか、よくやったという言葉は言えません。しかし、変わった姿を見せて欲しいとは言いたいです。挑戦者が持っているもの出し惜しみして勝てるような世界ではありません。これからの西岡の課題は、どんな試合でも自分の実力を出しきる試合をすることでしょう。その姿が見えないうちは世界タイトルに何度挑戦しても結果は同じでしょう。ジム移籍という刺激がどういう方向に向くかはわかりませんが、年齢的にもまだまだ若いわけですからやり直しがきくと思います。それには、すべてをゼロにするくらいの気持ちでやることが大切でしょう。
 一方4度目の防衛に成功したウィラポンですが、必ずしも調子が良いようには見えませんでした。前半はあまり手数を出さない選手ですが、中盤以降は単発的に右ストレートを決めるなどはしたものの、西岡の動きを最後止めきれず、西岡の消極的な戦いぶりに助けられてポイント・アウトはしたものの、辰吉戦のイメージが強いせいもしれませんが、ウィラポンも攻めあぐねたように見えました。それと2Rくらいから、セコンドが大量の水をウィラポンにかけていたのも、初めて見た光景で、このあたりに西岡をなかなか捕まえきれないウィラポンに対するセコンドの苛立ちがあったように見えました。いずれにしても消極的で逃げる挑戦者、単発のパンチで無理をして攻めないチャンピオンでは試合が盛り上がるはずがないと感じました。高度の技術戦と見る向きもあるようですが、技術戦と言うにはチャンピオン、挑戦者とも攻めることにあまりにも消極的に見えました。とはいうものの、ジャッジのポイントは2〜4ポイント差でしたが、その点差以上に差があったと感じたのは私だけではないと思います。最後に私の採点は以下の通りでした。

ウィラポン
10
10
10
10
10
10
10
10
10
117
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
合計
西     岡
10
10
10
111

2000年6月11日:TV観戦

 畑山が1年ぶりの再起戦、セラノを下し2階級制覇を達成した。この試合については、決まったときから疑問を投げかけられていたし、予想も畑山にとって芳しいものはなかった。しかし、勝ったから言うわけではないが、私は畑山の勝利も十分あると思っていた。ひとつは、この1年のブランクが減量で苦しんでいた畑山にとって、肉体的にも精神的にもいい休養期間になったのではないかということ。ひとつはセラノの実力について評価できなかったことにあった。特にセラノの実力については、3月の坂本戦を見れば左は一流だという声を聞くが、その左も私はスピードがあるわけでなく、鋭さがあるようにも思えなかった。確かに左のパンチで坂本の目を切り裂き、腫らしたということは事実であるが、原因はパンチの威力というよりどちらかというと坂本の方にあったのではないかと思っていた。また、超人的なスタミナやタフネスあるという選手でもないだけに、どこがそんなに怖いのかわからなかった。ただ、心配だったのは、畑山がブランクの影響で、序盤に自分のリズムでボクシングができずに、セラノにペースを握られるとラテン系の選手だけに、捕らえきらないうちに12Rが終わってしまうということとと、スーパー・フェザー級時代に見られた腫れやすいのは体質であり、ウエイトを上げても変わらない状況であるということだった。しかし、いずれも心配に及ばなかった。特に1Rに鋭い踏み込みからワンツーをヒットできたことが、畑山自身にとって、一番自信になったことではないだろうか?そして心配された腫れも、ほとんどなかった。結局5Rに右アッパー、7Rに右ストレートでダウンを奪い、8Rに連打で3度倒してのKO勝ちは見事であった。日本人としては、26年前にガッツ・石松がWBC世界ライト級タイトルを獲得して以来の快挙である。
 試合後のインタビューで、初防衛戦の相手に坂本博之を指名した。恐らく90%以上の確率で、このカードは行われるだろう。予想は試合直前に行うとして、畑山の真価が問われるのは、正直言って坂本戦、その次ぎの指名試合(今のところはジュリアン・ロルーシ)だろう。この2試合をどんな戦い方で乗り切って行くのか、それによって評価が決まると思う。
 セミの名護だが、3階級下の世界ランカー、チャッチャイから1Rに、タイミングのいい右のアッパーでダウンを奪ったものの、ビデオを見る限りではボクシングが変わったという感じを受けなかった。相変わらず、右と左がコンビネーションで使えていないし、変革期ということにしても、ボクシングのスケールが段々小さくなっているように感じてしまう。右のジャブを何のために打っているのか、自分で何を相手に決めるのかが見えてこない。こんなボクシングを続けているようでは、先が思いやられる。名護自身も歯がゆさがあるだろうが、もし試合で納得いくボクシングができないのであれば、試合間隔をあけて、時間をかけて練習をしてからリングに立つ事も必要だと思う。パンチやスピードは世界でも通用するものがあるのに、ボクシングは段々世界から遠くなっているように感じる。具志堅会長や杉谷トレーナーがこの試合をどう判断しているかはわからないが、少なくともファンは名護のボクシングに不満を感じたと思う。次ぎの試合でファンが納得できるようなものが出なければ、名護はこのまま終わってしまう可能性もあるように感じた。