1998年12月29日:大阪市中央体育館

 飯田に続いて辰吉まで・・・
 正直言ってこんな結果は予測できませんでした。ただ、辰吉陣営は何かを隠して戦っているように思えてなりません。拳を痛めていたか腰痛か・・・。いずれにしても辰吉の戦い方は、明らかにここ数試合と違っていました。辰吉のいい時はもっと相手を見下した戦い方をしていましたが、今回に限ってはそんな感じを受けませんでした。一見すれば、スピードに乗って攻めているように見えたかもしれませんが、私の目には何か攻め急いでいるように見えました。攻め急ぐあまりリズムが単調になり、そこをウィラポンに衝かれた感じを受けました。それと今回はなぜシリモンコン戦で見せたようなボディ・ブローを打たなかったのかと疑問を感じました。ウィラポンが打たせなかったのかもしれませんが、辰吉の良い時は、ボディからの攻めが起点になっていることが多いように思うのですが、3R以降なぜボディを攻めようとしなかったのか、辰吉のみ知ることでしょうが、ボディを攻めていればウィラポンがあんな簡単に左を使えなかったように思います。いずれにしても今回はサラゴサとの最初の試合以来久々に、辰吉が自滅したような感じを受けました。辰吉の今後ですが、厳しい状況にあることは、誰もが同じ認識だと思います。ただ、本人の気持ちが維持できるのなら、もう一度とことんチャレンジしてもらいたいというのが私の気持ちです。
 勝ったウィラポンですが、確かに強いです。ただ、多分に気分屋的なところある感じがしましたので、安定的な世界チャンピオンになるようには思えません。機先を削がれたり、奇襲を仕掛けると案外脆いところがあるように思います。今回のように、相手が自分の壷に来ると抜群に強いでしょうが、ひとつ歯車を狂わせると攻略できる感じがします。とはいっても、左でリズムを取られたらまず勝てないでしょう。思っていた以上にハンド・スピードはありました。パンチがやや手打ちの感じもしますが、チャンスにあれだけパンチをまとめられるのは、実力者の証明なのかもしれませんね。
 セミファイナルで行われた日本バンタム級王座決定戦ですが、両者ともサウスポーのハードパンチャーだけにKO必至の試合でしたが、期待を裏切らない好ファイトでした。まず試合は1R半ば、クリンチの離れ際に渡辺の放った左ストレートが西岡を捕らえダウンを奪いました。渡辺にしてみればここで一気に攻め落としたかったところでしょうが、この選手の悪い癖で、ダウンを奪ったあとの詰めが悪くチャンス逃す結果となってしまいました。2R、今度は西岡が連打でチャンスを掴み、渡辺から2度ダウンを奪って逆転KO勝ち。詰めの差が勝敗を分けた試合と言ってもいいでしょう。勝った西岡ですが、今回は相手が前に来る選手だけにやりやすかったように思います。それと1Rのダウンを奪われたことが、チャンスを逃さないという集中力を生んだように思います。課題としては自分でボクシングの組み立てが出来るかということになるように思います。一方の渡辺ですが、この選手の良い面と悪い面が出てしまいました。良い面は1Rに奪ったダウン。相手の一瞬のスキを見逃さなかったところは良かったと思います。悪い面はチャンスで攻めきれないところ。性格的に優しいのか、早い回にダウンを奪うと変に固くなってしまうところが気になります。今回、相手の西岡にもパンチがあることを知っていたために慎重になったのかもしれませんし、結果は同じだったかもしれませんが、あそこは一気に攻めて欲しかったように思います。

1998年12月23日:愛知県体育館

 飯田が3度目の防衛に失敗してしまいました。ロハスの巧さにやられたという感じがしました。右でチャンスを掴めれば良かったのでしょうが、肩を脱臼したのではしょうがないと思います。世界レベルの戦いになれば運が勝負を左右することがままありますから今回は運がなかったということでしょう。負ける時はこんなものでしょう。あきらめずに最後まで戦ったことは評価してもいいのではないでしょうか。ただ、肩が脱臼ということであればボクサーとしてリングに立つことはどうかと思います。完治は難しいでしょうし、くせとして残るでしょうから飯田のボクシングができるのか疑問が残ります。不完全燃焼の気持ちはあるかもしれませんが、ここが引き際と考えるほうがいいかもしれませんね。本人の気持ち次第でしょうが、ボクサーとしての素質に恵まれているほうではない選手ですから、無理に自分をいじめる必要はないと思います。
 一方、ロハスですが巧いという感じはしましたけど、怖さは感じませんでした。かわす技術と相手の攻めをいなす技術は日本人にはまねできない感じです。ただ、スタミナには難点があるように感じました。飯田がもう少しプレッシャーをかけて細かな攻めができていれば違った結果がでたように思います。名護挑戦した場合、上体が軟らかいので上を狙うとロハスの術中にはまる感じがしますが、ボディからじっくり攻められれば攻略できない相手ではないと思います。
 さてアンダー・カードですが、まずセミファイナルに出場した世界ランカーの石井ですが、フィリピンのノーランカーを相手に4RKO勝ち。手数も出ますし、細かな連打で相手を攻略できたあたりは評価できると思います。相手は10月、ウィラポンに7RKO負けした選手のらしいが、ウィラポンよりも早く倒せたことも評価できるように思います。あとは、攻めが雑にならなければ相手にもよるでしょうが、チャンスはあるように思います。
 次に世界ランカーに挑戦した戸高ですが、前半張の思い切りのよい攻めに苦しんだものの、中盤以降張のスタミナ切れに乗じてポイントを挽回、世界ランカーに判定勝ちを収めました。相手の手数の減ったところを攻めた戸高陣営の作戦勝ちのように感じました。また、フィリピンのノーランカーと対戦した本田は、全く相手を寄せ付けず貫禄の3RTKO勝ち。3試合行われた6回戦では、去年の全日本新人王MVPの中野が、ダウンを奪いながら相手の抵抗に苦しみ判定勝ち。ヒッティング・ポイントの正確さには非凡なものを感じました。大原vs吉田戦は、実力差がありすぎでした。もう1試合の6回戦は、陽光アダチから三津山ジムに移籍した寺本が、千里馬神戸のハード・パンチャー福田に判定勝ち。リズムがやや単調だったのが気になりました。

1998年12月19日:後楽園ホール

 11試合中8試合がKO決着という近年にない迫力のある新人王決定戦でした。いつもはクラス別に感想をUPしていますが、今回はランダムに書いていこうと思います。
 今回一番目立った選手は、個人的にはMVPに選ばれた大塚より、バンタム級で技能賞に選ばれた仲の方が良かったように見えました。パンチもありますしスピードもあって今後が楽しみな選手です。今の段階では、去年フェザー級で新人王になった同じジムの洲鎌より上のような感じがします。ただ、強いて言えば欠点が見当たらないのが欠点になるかもしれないように思います。壁にぶつかった時に大崩れするところがありそうな感じがしました。次にMVPを取った大塚ですが、よく相手が見えているように感じました。相手の佐々木が勢いで攻めてくることを想定して立ち上がりはややおとなしい感じを受けましたが、2R以降はお互いに一歩も引かない打ち合いを展開しました。勝負は大塚の右フックがカウンターになって決まりましたが、相手をよく見ていたから打てたように思います。ただ、気になったのはスピード感に欠けるところ。全体的に鋭さがないのが気になりました。これから上で勝っていくためにはもう少し鋭さが欲しいと感じました。
 その他では内藤、大串の宮田コンビが快勝。内藤はここ2試合の鬱憤を晴らすような攻めで1RKO勝ち。大串は相変わらず重たいパンチで無敗の浜之上に2RKO勝ち。大串はボクシング界のタイキシャトルになると言っていたが・・・フェザー級の久間はジムの先輩で日本チャンピオンの越本のコピーといった感じの選手。パンチが手打ちになるところがあるのが気になりました。スーパー・バンタム級の山本は、試合巧者の草野を右ストレート1発でKO。さすが4勝すべてがKO勝ちというのが肯けるパンチを持っていました。スーパー・フライ級の佐々木は、未来の世界チャンピオン候補と評判の高かった小島をボディでKO。ライト・フライ級の小谷は、1Rのダウンを跳ね返し逆転KO勝ち。ウエルター級は安田が粘り勝ち。ミドル級は、鈴木が本来のボクシングとは程遠かったものの、相手の豊住も策がなく適確にパンチを決め判定勝ちとなりました。ライト級は元○○という肩書きのある選手同士の対決でしたが、大嶋が交通事故的(平たく言えば出会い頭)な右フックを決めてKO勝ちでした。

1998年12月15日:後楽園ホール

 来年世界タイトル挑戦を目論むパーマーが、今年最後の試合をKOで飾りました。ここ2試合、西澤、玉置に判定勝ちを収めていたパーマーですが、今回の相手がフィリピン・チャンピオンとはいえ、元々ライト級で戦っていた選手だけにKO勝ちをして当たり前のこと、問題は試合内容が世界タイトルへ挑戦するにふさわしいかというに注目していました。さて、結果的には7RでアレスナをKOしましたが見せ場があったのはこのラウンドのみ。もう少しアピールするものを見せて欲しかったように思いました。打たれ強さに難点のあるパーマーですが、相手のパワー不足はわかっていたはず。世界タイトルに挑戦するだけなら今のままでもいいかもしれませんが、勝つ気があるのならもっともっと先手を取って攻めるところを見せて欲しかったように思います。パーマーのパンチは東洋圏では通用していますが、世界というレベルで見れば平均的と言わざるを得ないでしょう。そんな中で勝っていこうというなら、もっと相手を圧倒するものがないと難しいように思います。
 セミファイナルには名護明彦選手との対戦も噂される木谷が登場。相手を全く寄せつけず2RKO勝ち。2度ダウンを奪いましたが、いずれも右のストレートを決めてのもので、切れの良さが目立ちました。右でカウンターを取れるのが木谷の特徴でしょう。今の木谷なら名護とやってもいい勝負ができるように思います。ただ、比較的イージーな相手と戦っているところがあるので、打たれ強さにちょっと不安を感じます。それと手数の多い選手との戦った時に、右のカウンターが打てるのか見てみたい気がします。このクラスは名護をはじめとして、山口、井岡、松倉、藤原、村越、中野など強豪がひしめいているだけに、イージー・ファイトを続けているといざ勝負となった時に、力が出せないで終わる感じがします。一度、苦戦しながら勝負を取る試合を見てみたいように思います。
 その他の試合では、4回戦に阪東ヒーローが登場。前回の試合ではダウンを奪われてのドローだっただけに、KO勝ちを狙っていたようですが、今回もまたドロー。試合間隔が短いこともあるのかもしれませんが、スタミナ不足という感じがしました。それと、もう一つ言わせてもらえば、最初2試合を簡単にKO勝ちしたため、ボクシングを少しなめているようにも感じました。三人の中では、センスが一番良いだけに、もう少しボクシングにまじめに取り組んで欲しいと感じました。

1998年12月14日:後楽園ホール

 コウジが9ヶ月ぶりにベルトを取り戻しました。9月の再起戦の出来がイマイチだったので、多少不安はありましたけど、蓋を開ければKOできなかったことを除けば満点に近い内容だったと思います。正直言ってこれほど出来の良いコウジは見たことなかったです。モチベーションも高く、しかも落ち着いて戦っていたのが、非常に良かったです。勝っても負けても、ドタバタした内容の試合の多かったコウジですが、これだけ相手を見て戦えたのははじめてではないでしょうか?一見、柳田がジャブを打っているようですが、実はコウジが手を出さざるを得ない状況に追い込んでいるため、柳田は得意の右をなかなか打たせて貰えませんでした。柳田の右が出る時は、コウジが予測しているため、ほとんどブロックやダッキングでかわされていました。とにかく、今回のコウジはプレッシャーのかけ方が非常によく、パンチも無駄なく適確に決めていました。歴戦の兵にこんな戦い方をされてしまうと、いくら勢いのある若者でも相手を崩すのは容易でないことを証明したような試合でした。コウジが一回りスケールアップしたと感じたのは私だけではないと思います。腰痛の影響があるのかもしれませんが、パンチに切れがなくてダウンを奪えなかったことに多少不満は感じますが、贅沢を言ったらきりがないので、今回はこれで良しだと言えるでしょう。これからのコウジは、少し楽しみな感じがします。
 一方敗れた柳田ですが、突然のタイトル挑戦、しかも試合間隔がわずか1ヶ月ということもあって、多少調整不足の感は否めませんでしたが、随所にハードパンチャーの片鱗は見れました。しかし、今回のコウジが相手では、ちょっと相手が悪かったですね。相手のプレッシャーに自分のペースを掴めなかった感じがしました。ただ、あまり打たれ強くないということでしたが、コウジの強打を耐えたことは自信となるように思います。パンチもありますし敗れたといっても今後楽しみな選手ではあります。今回の経験を活かして再度浮上して欲しいと思います。
 セミファイナルは、ライト級の1位と10位の対決でしたが、結末は1位が10位にローブローを浴びせて失格負け。洒落にならない結果となりました。1位の福永は畑山vsデュラン戦の前座で、リックに挑戦することになっていたようですが、これで白紙に・・・リックにはどうもこういう不運がついて回りますね。試合内容は、福永の動きに精彩がなく、望月の左右フックに大苦戦。そのままでも判定負けになっていたと思います。いずれにしても、日本タイトル挑戦を目論んでいる割には、どちらもお粗末という感じがしました。それにしても、浅尾レフェリーの処置は、どうかなと思います。確かに5Rに1度、福永のローブローで、望月が苦しんでインターバルを延ばしましたが、その時は減点は取らず、特に注意もなし、9Rも減点を取った後福永陣営に次ぎにローブローを打ったら失格にするという警告もなしにいきなり試合を止めるのは、レフェリーの権限とはいえちょっと問題を感じます。減点されながらまた意識的ではないにしてもローブローを打った福永が、一番悪いことは悪いのですが、過去に同じような例があっても、失格にはなっていないだけに、JBCもやるならやるという方針を徹底して欲しいと思います。

1998年12月12日:ビデオ観戦(試合日:1998年10月25日)

 ようやく名護vs山口戦のビデオを見ることができました。おおよそ試合展開は、新聞、雑誌などで想像はついていましたが、玄人好みの試合ではあるでしょうが、どちらも相手を意識しすぎてしまった試合だったように思います。まず、論議を呼んだ採点ですが、私は96−94で名護の勝ちとなりました。ただこれはあくまでビデオを見ての採点ですから、会場で見ているとまた違った見方になったかもしれないように思います。いずれにしても、山口の手数を取るか、名護の有効打を取るかで見方の分かれる試合だと思います。
 さて試合の感想ですが、最初にも書きましたが、あまりにもお互いを意識しすぎて試合展開が最初から最後まで変化がなく、見ている人にはちょっと物足りなさを感じたように思います。まず、名護ですが、相変わらず右フックを大振りしてバランスを崩してしまう場面が数多くありました。強いパンチを当てようとする焦る気持ちもわかりますが、細かく手数を出してパンチにメリハリをつけたほうが、KOにつながる可能性は高いように思います。元々手数が多い方ではありませんが、世界レベルで勝っていくには、無理をしてでも手数を出せるようにして欲しいと思います。それと、あとひとつ望むことは、相手が動くことがわかっていたのですから、もっともっとしつこくボディを攻めて、山口の動きを止めて欲しかったですね。特に上体の軟らかい中南米の選手と対戦した場合、ボディを打てないと相手の術中にはまってしまい、何もできないまま終わってしまうように思います。具志堅会長は、ボディ・ブローで中南米の選手を次々撃破していますので、ボディ・ブローを徹底的に教えて貰えばいいのではないかと思います。
 次に敗れた山口ですが、試合の前半、なぜ左ストレートを使わなかったのか疑問を感じました。左ストレートを打つと体が流れてしまうところがあるだけに、そこを衝かれるのを警戒していたのかもしれませんが、右のジャブが良かっただけに、もっと左を打てばジャッジの印象も変わったように思います。山口本人は、試合をコントロールできていただけに、それに乗ってしまったのかもしれませんが、右一本で名護を翻弄できていたわけではなかったですから、もうひとつ武器が欲しかったように思います。とは、いうものの、スピードとテクニックはさすがに一級品ですね。今回くらいのできなら、去年ボニージャに負けることはなかったように思います。テクニックだけなら、間違いなく日本人ナンバー1ですね。元世界チャンピオンですから当てはまらないかもしれませんが、名護とともに世界に一番近い選手に違いないことは十分証明されたと思います。いずれにしても、ポカのある選手ですから、集中力の持続が今後も課題となるでしょうね。

1998年12月8日:後楽園ホール

 6月に名嘉原の目を切り裂いてタイトルを奪取した加山の初防衛戦は、またも相手の目を切り裂いてTKO勝ちを収めました。
 勝った加山ですが、もっと固くなるかなと思っていたのですが、1Rは上々の滑り出しだったように思います。ただ、2月の河合戦でもそうでしたが、対サウスポーが苦手のようで、戸惑いを感じながら戦っているようにも見えました。その戸惑いが、2,3R小松にペースを握られてポイントを失う結果となりました。4R以降は、加山が右のストレートを使ってペース握りましたが、どっちかというと静かな展開のラウンドが続きました。そして8R、やや強引に打ち合いに出た加山の右のショートフックが小松の左目尻を切り裂き、試合は一転激しい打ち合いになりました。小松の出血は激しくかなり深い感じで、ラウンド中2度にわたってドクターがチェック、恐らくポイントでは勝っていると思っていたであろう小松はここで止められては負けになると思ってか、ドクター・チェックを拒否し、試合継続を盛んにアピールしていましたが、傷が深いことは明らかで、ラウンド終了後に またドクターがチェック、ここで試合が止まるかと思いましたが9R開始、小松は立ち上がるのが遅れ、傷の治療がまだ不完全であるのは明白、加山はチャンスとばかりに激しく小松を攻める。小松の傷口から再び激しい出血、レフェリーは試合を止めてドクター・チェックを要請、セコンドが呼ばれて試合終了。公式なジャッジでは3ポイント差だったようですが、ポイント差以上に接戦だったように思います。それにしても加山のパンチは、まさにカミソリ・パンチですね。タイトルを取った名嘉原戦でもそうですが、ショートパンチであれだけ深い傷を負わせるのは珍しいタイプの選手です。ただ、欠点としては、膝が固いためか、ディフェンスで勘に頼るスウェーバックを多用しすぎのように思います。ガードが下がるところもありますから、相手にタイミングをずらされるとちょっと危険な感じがします。次は佐伯との対戦が有力ですが、名嘉原、小松と違ってパンチのある選手ですから、ディフェンス面での強化が、安定チャンピオンへの課題となるように思います。
 一方、惜しくも敗れた小松ですが、これが精一杯だったように思います。足が使えるだけに、もっと出入りを使えば違った展開になったかもしれませんが、前半左のパンチが当たったことや挑戦者ということで、徐々に加山ペースに巻き込まれたことが敗戦につながったように思います。
 セミファイナルには、加山に敗れた前チャンピオン、名嘉原が登場しましたが、ノーランカーの桑名に辛勝しました。全体的に重たい感じで動きに切れがなく、これではチャンピオン返り咲きは難しい感じがしました。名嘉原は、このクラスの選手の中ではパンチがない選手ですから、やはり動きで相手を圧倒できなければ、勝ち続けていくのは難しいように思います。
 その他の試合では、8回戦にベテラン北野健雄が登場。最近、精彩は欠くものも、ベテランらしく相手を自分のペースに巻き込み5RTKO勝ち。勝ったものの、衰えが目立ちました。6回戦は新鋭同士の対戦。お互いに相手のパンチを警戒して決め手がなく三者三様の引き分け。4回戦は、いずれの試合もワタナベ・ジムの選手がダウンを奪って、4試合中3試合がKO決着。4回戦とはいえ、どの試合もちょっと力量差があった感じを受けました。

1998年12月5日:後楽園ホール
 5試合あった4回戦は全部KOで決まり、セミファイナルも簡単に終わっため、メインが判定試合だったのに早く終わった興行でした。
 まずメインの木村vs木内ですが、木村にとって木内は一番やりにくいタイプの選手だろうと思っていましたが案の定、木村らしさが見られなかった試合になってしまいました。ただ、動き自体は悪くなかったですし、スタミナ面での不安も見られませんでした。木村みたいなタイプは、相手が出てこないと良さが出ないだけに、木内のようなタイプにはこれからも苦戦しそうな感じがしました。それと、もう少し積極的に接近戦をやってもいいように思いました。距離を取ってワンツーを打つのもいいですが、それだとどうしてもワンツーだけで終わってしまって、なかなかハッキリとしたポイントが取れない感じを受けました。木村の悪い面だと思いますが、イマイチ攻撃に粘りがない感じがしました。本人もいいボクシングではなかったと認めていましたが、タイトル奪取には向けて課題が多いことを証明した試合だったと思います。一方、敗れた木内ですが、左で相手をコントロールするだけでは格上の選手とやった場合なかなか勝てないように思います。特に右のストレートが打てないのが何と言っても致命的な感じがします。本来、リード・ブローは自分の得意パンチを決めるために使うのが主目的なはずなのに、木内のボクシングを見ていると主従の関係が逆転しているイメージが強いです。デビュー以来5連続KO勝ちしている(それ以降KO勝ちがない)選手ですから、パンチがない選手ではないと思いますが、攻撃面での進歩がなければ、日本ランキングの中位と下位を行ったり来たりの繰り返しに終わってしまうように思います。木内が今の壁を打破するカギは右のストレートだと思います。
 次にセミファイナルですが、これは完全なミスマッチでした。ランキング1位とノーランカーでは勝負になるわけがないです。来年4月に日本タイトル挑戦を予定している前田ですが、こんな試合では、次に何も繋がらないでしょう。勝ってもあまり喜べない試合だったように思います。
  8回戦で行われたキムvs新岡戦ですが、新岡の頑張りを評価したいと思います。ただ、倒されないという気持ちは感じられましたが、相手を倒すと言う気持ちが、拳に伝わっていなかったように思います。新岡は悪い選手ではないですが、相手によって自分に負けてしまうところがあるように思います。どんな選手と戦う場合でも、同じ気持ちで向かっていって欲しいと思います。気持ちで負けなくなれば、絶対日本チャンピオンになれる選手だと思います。一方のキムですが、ちょっと壁にぶつかっているかなという感じを受けました。ファイター・タイプで戦うでもなく、ボクサー・タイプで戦うわけでもなく、ボクシングが中途半端でした。左にいいものを持っているだけに、早く自分のボクシング・スタイルを見つけて欲しいと思います。
 4回戦はKOの連続でなかなか面白かったです。その中で、今年の新人王の有力候補と言われながら準決勝で敗退した矢澤が登場。何とか3RTKO勝ちを収めたものの、体全体に力が入りすぎているのが気になりました。今のままだと、カウンターの打てるハード・パンチャーと対戦した時に手痛い目に遭うように思います。

1998年12月3日:後楽園ホール

 久しぶりにカズがメインで行われた興行ですが、カズの試合は天気同様お寒い内容の試合でした。
 まずメインですが、カズの試合は見るたびに忍びないものになっていく感じがします。9月の試合は再起戦ということで、内容は割り引いて考えたほうがいいと思っていましたが、今回の試合を見る限りではお先真っ暗という感じがしました。特に気になったのは、ジャブを使えないために相手の突進を防げず、真っ直ぐ下がってロープに詰まってしまい、挙げ句にガードの悪さをつかれてパンチを浴びる始末。もう少しパンチ力のある選手とやっていたら、いつKOされても不思議ではない内容でした。正直言って日本ランキングを取りたい選手、ランキングを上げたい選手は、カズに挑戦すればかなり高い確率で勝てる感じがします。カズが今後浮上するカギは一にも二にもリード・ブローにあると思います。リード・ブローで相手の攻めを封じることができれば、パンチはある選手ですからまだまだ浮上できるチャンスはあるように思います。最近あまりいい噂は聞きませんが、ファンから見捨てられないうちにもう一花咲かせられるよう練習に励んで欲しいと思います。
 その他の試合では、3試合行われた6回戦で目立ったのはミニ・フライ級の新井田。よく動く選手ではありましたが、パンチ力とスタミナに難があるという印象を持っていました。しかし、3戦3KO勝ちの北野を相手に、臆することなく持ち味のスピードを活かした攻めを見せて、1R2分過ぎに右のフックをカウンターで決めてKO勝ちを収めました。パンチ力不足を補う意味でも、今回のようなカウンターが取れるようになれば、今後もっと強くなりそうです。次に、今年の東日本新人王ライト・フライ級準決勝で、優勝した大和田に敗れた菊井も登場しましたが、こちらは前半こそいい動きは見せたものの、中盤以降は尻つぼみとなり、最終ラウンドにレフェリー・ストップ負け。新人王予選で勝ち進んだの時のような切れがなかったこともありますが、相手からプレッシャーをかけられると弱気になっていることが、はっきり感じ取れました。精神力の鍛練が必要な感じを受けました。