1998年6月29日:後楽園ホール

 11月にも世界タイトル挑戦が噂される渡久地が、元世界チャンピオンを相手に苦戦した。渡久地の出来が悪かったこともあるが、さすが元世界チャンピオン、パスクワも1月に中村正彦に2RKO負けした選手とは思えないくらい頑張った。今回、渡久地の出来が悪かったのは一つには、前回の試合から2ヶ月しか間隔がなく十分な調整ができていなかったことが上げられる。この選手の減量は恐らく一気に落とすやり方だと思うが、その方式だと、体重の増減が激しいだけに、ある程度試合間隔をあけてあげないと、いい試合ができないように思う。それと今回、契約ウエイトがバンタム級のリミットの118ポンドというのも、渡久地の動きを重くした原因のように思う。ということで、渡久地の今回の不出来について、心配することはないと思う。今回の試合では、何回もピンチになりながら最後まで試合を捨てずに頑張ったあたりに、渡久地の成長を感じた。最後に見せた頑張りは必ず次につながるであろう。ただ、ベテランの巧さに惑わされていたのが気がかりである。少なくとも渡久地がターゲットにしているペニャロサは、パスクワよりスピードがある選手だけに、スピードに負けないだけの切れが出るかどうかが、一つのポイントのように思う。渡久地にとって出来は悪かった(良くなかったではない)が、それなり収穫も多くあった試合だったのではないだろか。
 セミファイナルは佐伯が、ベテランの横田を2RでKOしたが、そこまでの内容誉められるものではない。2度の日本タイトル挑戦の失敗が全然活かされていない。今回はたまたまパンチが当たったからいいようなもので、不用意にパンチを食わないようにしないと「2度あることは3度ある」になってしまう。「3度目の正直」にしたいのならディフェンスを重点にしてトレーニングをして欲しい。もう一つの10回戦は、捲土重来を期す平仲が、日本ランク復活に挑む水島と対戦。試合は平仲が格の違いを見せて5RTKO勝ち。最後に見せた連打は見事だった。一方の水島だが、何かボクシングに迷いがあるように感じた。本来アウト・ボクサーの水島が、ファイターのような試合をしている。再起をするならもう一度、自分のボクシングを思い出して欲しいと思う。

1998年6月23日:後楽園ホール

 名嘉原vs加山戦は、隠れた好カードだと思っていたが、レベルの問題はさておいて内容としてはいい試合だった。名嘉原はこれが3度目の防衛戦だったが、法華の太鼓とは逆で、見るたびに内容が悪くなる。今回もパンチのある加山に正面から打ち合いにいって墓穴掘る結果になってしまった。初防衛戦で佐伯に勝った時のように、左右に動いていれば、加山の右アッパーを貰わずにすんだ試合だ。粘り強さが特徴であるのは事実だが、このクラスでパンチを貰い続けるとやはりいい結果にはならない。パンチのない選手が相手ならともかく、やはり名嘉原の今後の課題はパンチを貰わないことだろう。最終的には右目上の傷が深くなってのストップだったが、内容的には完敗だった。一方、新チャンピオンとなった加山だが、相手の動きを良く見て冷静な試合運びだった。最近なかなかKOができず、やや壁にぶつかっている感じがしたが、8Rにダウンを奪うなど、かなり練習を積んでいるように見えた。今回は低く入ってくる名嘉原に対して、巧く右のアッパーを使いながら連打をするなど、相手に対する研究も十分できていた。パンチが手打ちという欠点はあるが、パンチを打つタイミングがいいだけに、防衛を重ねることも可能だと思う。目標はジムの先輩の吉野ということだが、吉野より器用な感じがするので、巧くすれば吉野以上になる可能性を秘めていると思う。加山には1回でも多くこのタイトルを守って欲しいと思う。
 セミファイナルでは、加山と同郷で、9月に日本タイトル挑戦が決まっている中島が、フィリピンのクラベと対戦。相手にボクシングをさせず完封勝利を収めたが、やはり、パンチのないのが気になってしまう。パンチのないのを連打でカバーするなどしないと、星野には通用しない感じがする。とにかく連打で相手を参らせるボクシングができれば、スピードのある選手だけに面白い存在になるように思う。

1998年6月16日:後楽園ホール

 この日のメインは、フェザー級のランカー同士の一戦だったが、今一つ盛り上がりに欠けた一戦だった。勝った萩原だが、2月に日本フェザー級チャンピオン、越本隆志に挑戦して敗れて以来の再起戦だったが、相手のペースにはまって本来のボクシングではなかったが、それでも要所を締めたといった感じがした。再起戦ということで、慎重になるのもわかるが、もう少しチャンスで倒しにいって欲しかった。念願の日本タイトル奪取には、チャンスでたたみかけるボクシングを身につける必要があると思う。一方敗れた木内だが、この選手にはかわすことではなくて相手を倒すボクシングを見せて欲しい。デビューから5連続KO勝ちして以来KO勝ちがないため、パンチがないという意見もあるが、パンチがないのではなく、相手のパンチをかわすことを重視しすぎるあまり、攻めるということが疎かになっているように見える。ジムの指導方針もあるので、あまりいいたくないが、木内をチャンピオンにしたいになら、もっと攻めることを教えるべきだ。この選手にある程度攻撃力がつけば、OPBFチャンピオンの今岡あたりとも十分互角に戦えると思う。素質的には日本ランクを出たり入ったりするような選手ではない。何となく宝の持ち腐れという感じがするボクサーだ。
 セミには試合枯れの続く岡本泰治が1年3ヶ月ぶりに登場。折角の強打も試合枯れのため、錆付いてしまった感じがした。清水が頑張ったこともあるが、もう少しコンスタントに試合をしないと、このままで終わってしまうように思う。これからいかに試合が組まれるかが今後のポイントのように思う。

1998年6月15日:後楽園ホール

リックが14番目の刺客にも圧勝した。立ち上がりこそアンドレイのパンチにたじろいだところもあったが、アンドレイのリズムを読み切ってしまうと左のジャブを使い分けて一方的に試合を支配して7RTKO勝ちを収めた。今のリックに勝てる相手は日本にいるのだろうか?とにかく目立つのはジャブの使い分けの巧さ。リックのジャブの使い方を日本の他の選手も取りいれるべきだ。ジャブを使い分けることによってペースを掴むリックの技術は非常に高度ではあるが、ボクシングに幅がでるだけに、覚える価値のある技術である。ただ、リックにも気になるのはこのところもある。最近、ボクシングが少し荒くなっている点である。挑戦者がまともにいっては勝てないと言うことでラフ・ファイトを仕掛けていることもあるが、リックも少しそれに合わせすぎているように思う。相手に合わせてラフ・ファイトをすると思わぬ墓穴を掘ることもある。そこさえ注意をしていれば、あと5回や6回はタイトルを守れる。一方敗れたアンドレイだが、まだ、経験不足という感じがした。リックも言っていたが、強いパンチを持ってはいるが、単調な攻めのため相手に読まれると、自分のペースが乱れてしまっている。今後の課題は、攻めのバリエーションを増やすことだ。
 セミ・ファイナルは日本ランカー同士の一戦だったが、僅か27秒で決着がついた。吉田が調整に失敗したことも原因のようだが、村松が立ち上がりから得意の強打を浴びせ、再起第2戦を白星で飾った。とはいうものの、今日の試合は何も参考にならない試合だった。
 もう一つの10回戦には日本バンタム級2位までランクアップした仲里が登場。フィリピン選手相手に1RKO勝ち。日本バンタム級チャンピオン、大和心(帝拳)への挑戦の目途が立たないことから、今年中にOPBFチャンピオン、ジェス・マーカ(フィリピン)に挑戦することになりそうだ。仲里の試合についてイージー・ファイトばかりとの批判もあるが、日本のどの選手も手を上げない以上仕方のないこと。仲里本人もイージー・ファイトは望んでいないはず。マッチメイクを批判する前に、仲里との対戦に名乗りを上げる選手の出現を望みたい。

1998年6月8日:後楽園ホール

 まさか三谷が長島に負けるとは夢にも思わなかった。正直言って完勝は難しいだろうとは思っていたが、それでも実力的にはまだまだ長島が勝てるとは思っていなかった。ベテラン選手が負けるときというのはこんなものなのかもしれないが、それにしても三谷らしさというものがまったくなかった。人の反感を買うような三谷のパフォーマンスも見られなかった。それをさせないほど勇気をもって攻めた長島を評価できるが、それにしてもくり返しになってしまうが、あの憎たらしい三谷が見られなかったのは残念である。精神的に弱いと言われている三谷だが、少なくとも今回はビビるような相手ではないし、いつもの三谷ならば前半は長島を圧倒していたはずだ。それができなかったのは減量の失敗があったのかもしれない。常にベスト・コンディションは無理にしても、今までの三谷なら負けていなかったと思う。今回の敗戦はそれでなくともこのスーパー・フェザー級戦線で遅れを取っていた三谷とって、遅れを取り戻せなくなってしまうような大きなものである。三迫会長も完全に引導を渡すと思うがそれもやむを得ないだろう。負けるにしても内容が悪すぎる。もう先には進めない。三谷もここは男らしく引き際と考えて欲しい。希望なき戦いは、彼には似合わない。
 一方の長島だが、これほど見事な試合が出来るとは思わなかった。私は長島を買ってはいたが、これほどの選手に成長しているとは想像できなかった。相手の調子が悪かったからという声もあるかもしれないが、試合に向けてベストの状態を作ったことが勝因のひとつであるし、また、相手に名前負けしなかったことや、パンチを食っても攻めたことは、長島が一回りも二回りも成長したことを印象付けられた。正直な話最初にも書いたが、善戦はできてもまだ三谷には勝てない思っていた。長島陣営も大きな賭けだったのかもしれないが、きっちりと答えを出した長島は、近い将来必ず、畑山やコウジ・有沢を脅かす存在になると思う。それと指名試合が予定されていたホセリト・リベラが国内タイトルを失ってOPBFランク落ちしたのも長島に運があるように思う。順調にいけば来年にも長島の世界タイトル挑戦が実現するであろう。
 セミには青山が出るはずだったのに・・・。樽井の相手は一応ヨネクラ・ジムのホープ、金山に変更された。試合は、樽井が前に出て、金山が受けるといった展開だった。最後は金山が樽井の左の目尻を切り裂いてドクター・ストップがかかったが、内容は誉められたものではなかった。金山は今後日本タイトルを目指すにあたって、もう少し守りに回った時の対処法を覚えないといけないように思う。守りに入ると守勢一方になってしまうのが気になった。これで4戦4勝(3KO)だが、イマイチの内容の試合ばかりだ。早くプロに馴染まないとこれ以上の成績は残せないと感じた。一方の樽井だが、こちらも成長がないですね。パンチの強いのはわかるが、もう少しパンチの強弱をつけるようにすればもっとチャンスを作れるはずだ。攻撃にメリハリが出来るようになれば間違いなく上位を脅かす存在になると思う。
 4回戦では阪東タカの弟、ヒーローがデビュー戦を見事な1RKOで飾った。試合時間はわずか51秒だったが、少なくとも兄よりは良いボクサーになるような感じがした。今後に期待したい。

1998年6月6日:後楽園ホール

 大和が初防衛戦を圧勝した。挑戦者の海戸とは一度対戦しており、その時は引分けで大和が勝者扱いとなったが、決して分の良い試合ではなかったと記憶している。それだけに海戸にも大和を攻略する自信があったであろうし、大和にも海戸ととの相性について不安があったと思うが、いざ蓋が開くとそんな心配などまったく必要がないほどだった。ただ、大和も勝つには勝ったが、相手を圧倒しながらダウンをひとつも奪えないなど、相変わらず非力さを露呈したのが気になる。海戸のガードが甘く、顔面へのパンチが度々ヒットしたためそこばかり攻めていたのが不満を感じたところだ。今後OPBF、世界とランクアップしたいのなら、もっともっと上下の打ち分けをすべきだ。今回の試合でも大和が上下の打ち分けをしていれば終盤KOができた試合だった。チャンスでは必ずKOすることを覚えたらかなりいい線までいくと思う。大和はデビューの頃から見ている選手だけにここまで成長したことは評価したいが、これだけで満足しないでもっと貪欲に上を狙って欲しい。
 一方敗れた海戸だが、前の大和のイメージを引っ張りすぎていたように感じた。大和の成長が想像以上だったのかもしれないが、あまりにも策がなかった。元来器用なボクサーではないが、もっと勝つための工夫しないと大和のような選手には通用しない。折角のパンチも今回のような試合運びでは宝の持ち腐れだ。パンチを活かすボクシングを覚える必要がある。パンチが当たらなければ話にならない。もう一度パンチ活かす工夫を覚えて再起して欲しい選手だ。
 セミは帝拳の強打者大谷が、老いぼれマーチンに4RKO勝ちしたが、決して誉められるボクシングではなかった。折角のチャンスにも追い打ちができずに生かし切れなかった。勝ってコーナー・ポストに駆け上がるパフォーマンスも結構だが、それよりまず、チャンスにたたみかけるボクシングを覚えるべきだ。大谷も海戸同様、パンチが宝の持ち腐れの選手。打たれないことを考えることも必要だが、それ以上に攻めることが大切。大谷にはいつも快勝しても不満を感じてしまう。年齢も30歳だけにチャンスはそうない。チャンスを生かすためにもたたみかける連打を身につけて欲しい。
 そしてバトナサンだが、プロ17戦目の桑名の抵抗に手を焼き、KOチャンスを何回も掴みながらダウンすら奪えなかった。デビュー以来3戦ともKO勝ちしたバトナサンだが、スタミナのあることが証明された試合であったが、詰めの甘さも見られた試合だった。今後上位の選手と戦うためには、詰めを間違えないことが大切となる。スピードもパンチもある選手だけに戦術面での成長をすれば日本チャンピオンは軽いだろう。

1998年6月3日:後楽園ホール

 川益が1年9ヶ月ぶりの復帰戦を豪快なKO勝ちで飾った。相手が日本で3戦3KO負けの李振豪だけに予想された展開ではあったが、攻めに関してはブランクを感じさせない試合だった。体調はそれほど良くないと言っていたが、そんな感じはまるでなかった。ただ、ディフェンス面では相手のパンチを不用意に浴びるなどやや不安な面もあったが、これはブランクによるもののように思えるのでこれからコンスタントに試合をこなしていけば徐々に改善されると思います。今回のウエイトはジュニア・フェザー級だったが、今後このクラスでいくのかそれともバンタム級に戻すのかはわからないが、どちらのクラスにも日本では相手になる選手がいないように思います。
 セミは井出と折原が対戦。万に一つもKO決着はないと思っていたが、井出が3Rで折原をKOしてしまいました。少し折原が脆すぎました。そんな感じがした試合でした。
 6回戦には白井・具志堅ジムの第2のホープ柳川が登場しましたが、相手の荒っぽいボクシングに手を焼き、KOをチャンスを再三迎えながら判定まで粘られてしまいました。今後上位に行くには、KOで決められるチャンスには必ずKOするというボクシングが必要。一つのチャンスを生かせるボクシングをしなければ、いつかは痛い目に遭うような気がします。