
1999年8月29日:TV観戦
今回、会場に足を運ぼうかどうか前日まで悩んでいた。しかし、前日夜に調整を失敗したようだという話を聞いて、TV観戦にすることを決断した。
この試合が決まった時、正直な話この結果は予想できた。しかし、今まで尽く我々の予想を、いい意味でも悪い意味でも裏切り続けてきた辰吉だけに、何かやるのではないかという気持ちは、試合が終わるまで常に心の片隅にあった。おりしも、TV放送が始まる直前から私の住む東京では、これから始まる試合を予感させるような激しい雷雨に襲われていた。
試合は1Rからチャンピオン、ウィラポンのペースだった。鋼鉄の鎧をまとったような肉体から放たれた左のジャブ、右のストレートが辰吉を的確に捕らえていた。辰吉も必死にパンチを放つが、スピード、パワーともウィラポンとは比較にならないほどスローで力を感じなかった。そして3R、ペースを変えようとした辰吉を、ウィラポンの強烈な右ストレートが何度も捕らえ、その度に辰吉の膝が揺れた。普通の選手であれば決まっていたように思うが、辰吉は倒れなかった。5Rにも、辰吉はダウン寸前のピンチになるが、ここも驚異的な粘りで倒れなかった。しかし、勝負はもう決まったと思えた。そして7R,開始早々ウィラポンの右ストレートが決まる。ウィラポンはレフェリーの方に目をやりストップを促す。次の瞬間、再びウィラポンの右が辰吉の顎を捕らえた。辰吉は倒れなかったが、これまでと見たレフェリーが試合をストップするのと同時に、辰吉コーナーからタオルが入った。その時辰吉は、レフェリーのスティールの腕の中で、崩れ落ちようとしていた。
最後の最後まで倒れなかった辰吉のファイティング・スピリットは、負けてもファンを納得させるものがあったと思う。しかし、辰吉は世界という舞台で戦うボクサーとして限界であったことを思い知らされた。減量に苦しんでいたこともあるだろうが、体つきに張りがなく、動きに辰吉らしい切れを感じなかった。おそらく戦いながら辰吉自身、こんなはずがないという気持ちが強かったと思うが、気持ちが体に伝わっていなかった。辰吉が何もできないまま、完敗したのを初めて見た。これ以上戦うのは無理だと思う。本人もそのあたり感じたようで、試合後引退を示唆する発言をしたようだが、賢明な判断だと思う。敗れたといっても辰吉丈一郎という選手が、いつまでも我々の心に残るボクサーであることを感じた試合だった。
冷静沈着なボクシングで辰吉を返り討ちしたウィラポンは、攻めに回ると本当に強いと感じた。辰吉との2試合では、守りに回ることが少なかったので、オールマイティーな強さがあるかどうかはわからないが、今回の試合で見せたような左のジャブのスピードと右のストレートの切れがある限りしばらくはタイトルを守るように思えた。とにかく強いチャンピオンという印象が心に刻まれた。
1999年8月28日:後楽園ホール
スーパー・バンタム級上位ランカー同士の試合は、1位の福島が、4位の北島を予想外の大差判定で下しました。
福島はこの試合まで13連勝中で、その中にはインドネシア,フィリピンのナショナル・チャンピオンを下した星が含まれている。一方の北島は、今年の4月日本チャンピオン、真部豊(宮田)に挑戦したが8RTKO負け。この試合が再起戦でした。戦前の予想は、最近もたついた試合を見せていた福島を、日本タイトル挑戦には失敗したものの真部を苦しめた北島が、判定でもKOでも有利ではないかと思っていました。しかし、試合が蓋を開けると福島のスピードとパワーが試合を支配して、ダウンは奪えなかったものの、文句ない判定で福島の手が挙がりました。
勝った福島ですが、念願のタイトル挑戦まで負けられないという気持ちが、ボクシングの中に感じられた試合でした。その気持ちが常に先手をとる形となり、北島にペースを与えませんでした。最近の試合は、勝って当たり前という相手だっただけに福島のボクシングを小さくしてしまったのかもしれませんが、今回の試合では動きが良く別人のように見えました。今回の試合は、福島コーナーの真下で見ていたのですが、高橋会長も、今回は福島のやりたいようにやらせたようで、それも良かったのかもしれません。ただ、勢いに乗りすぎてノーガードで攻めにいったり、パンチを受けたあと効いていないという素振りを見せるのは、あまり感心できませんでした。次は恐らく日本タイトル挑戦となるでしょうが、今回くらいのボクシングができると、真部も相当苦しむように思います。
一方敗れた北島ですが、前回の試合でTKO負けをしたことが、試合ぶりに微妙な影響を与えていたように見えました。特に1,2Rに固さが目立ち、福島にペースを握られてしまったことが、敗戦につながったように見えました。セコンドからは前に出るよう指示されていたようですが、福島のプレッシャーに下がる場面が多く、時折放つ右ストレートも踏み込みがないため当たりが浅く、福島に決定的なダメージを与えることができませんでした。今回の試合を見て感じたのは、北島にとって今必要なものは休養ということ。結果論となりますが、初黒星後だっただけに、もう少し時間を置いてから戦っても良かったように思います。肉体のダメージは回復したかもしれませんが、精神的なダメージが残っていたように思います。西岡に勝つなどいいものは持っている選手だけに、このままで終わるとは思いません。そのために休養をとって気分転換をすることが、一番大切なように思いました。
セミファイナルの木村vs阪東戦は、5Rに偶然のバッティングにより阪東が負傷してテクニカル・ドローとなりました。阪東にしてみると4Rまではやや押し気味の試合だっただけに悔しい結果だったように思います。
その他の試合では、かつてのトップ・ランカー山中が、2年7ヶ月ぶりに再起戦を行い、4RTKO勝ちを収めたもののダウンを奪われるなど、不安定な戦いぶりで、今後に不安を感じた内容でした。また、日本タイトル再挑戦を目指す鳥海は、JBスポーツ期待の大橋を3RTKOで下しました。しかし、KO狙いもあったのでしょうが、以前に比べて戦い方が粗くなっていたのが、やや気ががりな点ではありました。
また6回戦では、インターハイ・チャンピオンからプロ入りした関口が、デビュー戦を行いましたが、1Rにダウンを奪ったものの大川の抵抗に苦戦、判定勝ちは収めたもののややホロ苦いプロ・デビューとなりました。
1999年8月25日:後楽園ホール
メインは元世界チャンピオンのチャナが、その実力差を見せ付けた試合でした。チャナは33歳で、95年12月にロセンド・アルバレス(ニカラグア)に敗れてタイトルを失ったものの敗戦はその1敗だけで、その後は5戦5勝という戦績でした。タイトルを奪った93年2月の大橋秀行戦以来久しぶりの海外のリングということもあり、またノンタイトル戦ということもあったので、しっかり調整してきたか心配をしていましたが、試合を見るかぎりその心配は必要ありませんでした。特に、1Rに見せた右アッパーは強烈で、その右アッパーによって横山が、攻めのリズムが全く掴めなくなってしまいました。2R以降はポイント抑えるようなボクシングで、無駄なことはしないという戦いぶりでした。ただ、全盛期の頃と比べると、ボクシングやや雑になったかなという感じがしました。いずれにしてチャナのボクシングは、日本ランカー・クラスの選手では、まだ歯が立たないことを見せつけた試合でした。
敗れた横山ですが、序盤を見たかぎりでは、8Rくらいまでに倒されてしまうかなと思いましたが、よく最後まで粘ったと思います。横山は、攻めのボクシングができる時はいい試合をしますが、後手に回ってしまうと何もできない感じがします。特に前に出てくる相手に対して、真っ直ぐ下がってしまうので、攻められるとディフェンス一辺倒になってしまう悪い癖が、直っていないように思います。これから上を狙うのであれば、サイドへ動くことを覚えて欲しいです。
セミファイナルでは石川が、WBCインターナショナル・チャンピオンのファンディに判定勝ちを収めました。しかしながら試合は、山場のない盛り上がりに欠けたものでした。勝った石川ですが、どれを取っても平均点というボクシングで、これから先、ランキング上位の選手に勝っていくのは難しい感じがしました。今回の相手が、カウンター狙いで攻めてこなかったから勝てたような試合でした。パンチがある方の選手ではないですから、もっと前後左右に動いて手数を出せるようになって欲しいです。敗れたファンディですが、パンチを貰わないかわりに、こちらも攻めないというボクシングでした。カウンターが巧いところはありましたが、右のパンチがオープン気味で、パンチもあまりない感じでした。
1999年8月24日:後楽園ホール
2連続KO防衛を果たし、安定チャンピオンになりつつあった加山が、佐竹ファンには申し訳ないが、楽勝を予想された試合で思わぬ苦戦をしました。
今回の加山は、全体的に動きが重たかったように見えました。元来、不器用な感じのボクシングをする選手ですが、動きが重かった分、ボクシングの流れが悪くなったように思います。相手の佐竹のスピードが最後まで落ちなかったこともありますが、右のストレートは決めるものの返しのパンチがないため、ダウンを奪えませんでした。ボディを打つなど相手の動きを止めるための工夫もありませんでした。とはいうものの、要所要所は抑えた感じで、苦戦はしたもののポイント・アウトはしていたように思います。今後の課題として見えたのは、スピードのある相手に対して、どのように動きを止めるのかということと、本人も認めていましたが、サウスポー対策ということになると思います。加山のボクシング・スタイルですと、ボディを打とうとすると顎が上がってしまうかもしれませんが、これからはボディを攻められない勝ち続けるのは難しいように思います。サウスポー対策ですが、右のストレートだけに頼っている感じがするので、返しの左フックが打てるようになると、もっと楽な戦い方ができるように思います。いずれにしても今回の苦戦を、次の試合へのステップとして頑張って欲しいと思います。
一方敗れた佐竹ですが、97年の全日本新人王で中橋に負けた試合を見たことがありますが、その時印象でスタミナがなくプレッシャーに弱い感じがしていたので早いラウンドで倒されるように思っていましたが、スピードで加山を大いに苦しめました。ただ、攻撃面でもう少しそのスピードを生かして出入りをすれば違った結果になったように感じました。佐竹としては、今の時点で自分の最高のボクシングができたと思いますが、このクラスの選手にしてはややパワー不足のような感じがしました。パワーをつけようとすれば、持ち前のスピードが失うこともあるので難しいところはありますが、スピードを失わないパワー・アップもあるはず。このクラスで戦っていくにはもう少しパワーが必要だと感じました。
セミファイナルは、メインでも十分通用するハード・パンチャー同士の対決でした。どちらも一発で試合を終わらせられる選手だけに、目の離せない試合でした。渡辺は昨年12月、西岡利晃に2R逆転KO負けして、日本タイトル奪取に失敗後、今年の4月に平丸勝基に青息吐息のTKO勝ちで再起、クラスをバンタム級から1階級上げての試合でした。一方の岡本は今年の2月、辰吉に挑戦したホセ・ラファエル・ソーサに引き分け、今年の6月ノンタイトル戦で、OPBFバンタム級チャンピオン、ジェス・マカと対戦したものの、大差判定負けでプロ入り初の黒星を喫したあとの再起戦でした。試合は立ち上がりから岡本の一方的な内容でした。立ち上がりから右のフックが面白いように決まりました。渡辺は得意の左フックを狙い過ぎて手数が出ませんでした。そして3R,岡本も右フック一発で渡辺がダウン。立ち上がったものの足許が定まらず、自分のコーナーに足をもつれさせながら倒れ掛かりました。意識はしっかりしていたようですが、レフェリーはカウントを取りながら渡辺の様子を見て、足許がふらつくのを確認して試合をストップしました。勝った岡本ですが、日本ランカー・クラスには敵なしという感じがしました。特に一発、一発を振りまわす相手には絶対的な自信を持って戦っているように見えました。年齢的にこれから多くを望むのは難しいとは思いますが、相手を捕らえる巧さは、何かを期待させてくれるものでした。敗れた渡辺ですが、試合を重ねるごとに打たれ脆くなっているように見えます。元々、肉を切らせて骨を断つスタイルのボクシングをする選手ではありましたが、これだけ打たれ脆くなってしまうと、これから先が心配です。どちらかというとハートも強い選手ではないですから、ここが限界かもしれません。今回の試合も、岡本パンチを怖がっていたところがありました。パンチのあるいい選手ですが、これ以上はもう望めない感じがしました。
その他の試合では、最近泣かず飛ばずの感のある三島が、同じアマ出身の小笠原と8回戦を戦い2−0の判定勝ちを収めました。伸び悩みのところがあるかもしれませんが、ボクシング全体に気持ちが入っていないように見えました。今のような状態では、ランカーになることすら難しい感じがします。基本は出来ている選手ですから何かきっかけを掴むと上昇する可能性はあると思いますが、きっかけを掴むまでとにかくボクシングに集中することが大切だと思います。
1999年8月9日:後楽園ホール
カズ・有沢が、判定ながら昨年3月KO負けを喫した五月女に雪辱を果たしました。この試合は、カズのたっての要望で実現しただけに、カズとしては絶対負けられない試合でした。それだけに多少固さが出て、前半は五月女のスピードに苦戦するかと思いましたが、案外固さもなく五月女の右に合わせたカズの左が効果的に決まってポイントを稼ぎ、KOは出来なかったものの3人のジャッジが3〜6ポイント差をつける快勝でした。今回のカズは、パンチのスピード、力感はありませんでしたが、確実にヒットさせていました。パンチを当てるタイミングも良かっただけに、パンチにスピードがあれば、KOができたように思うのですが・・・。ただ、最終ラウンドだけは、カズもKOを狙って攻めて出ました。今までのカズが見せたことのない気迫で、五月女を追い込んだ姿は、今後のカズが変わるのではないかと思わせるものでした。KOは出来なかったものの、誰が見ても明白な勝利だっただけにカズも納得いく戦いだったと思います。今回のような気持ちで、パンチにスピードと力感が加われば、もともと実力のある選手ですからこれから楽しみだと思います。
一方敗れた五月女ですが、前に勝っているだけに今回も勝ちたいという気持ちは強かったと思いますが、3Rに受けたカズの左フックで萎縮していしまい、右のストレートが使えなくなってしまったことと気持ちで後手になってしまったのが、敗因だと思います。五月女もどちらかというと気持ちで戦っていく選手だけに、気持ち負けだけはしないだろうと思っていましたが、今回は気持ちでも負けていたように思います。
セミファイナルではいつのまにか、日本ランキングが4位まで浮上してきた大嶋が、2年先輩新人王の中根の巧さに苦戦はしたものの、最後の2Rを気力で攻めてポイントを奪い、2−0の判定で勝利を収めました。左のボディ・アッパーが更に威力を増していましたが、相手の動きにパンチが大振りとなって空を切る場面も多く見られました。ただ、スタミナがついたようで、最後の最後まで相手を攻めていたのが、今回進歩したところでしょう。これからの課題は、パンチのバリエーションを増やすこととメリハリをつけることでしょう。それができれば打倒リックも夢ではないと思います。一方敗れた中根ですが、パンチを当てる巧さとスピーディーな動きで大嶋を苦しめたものの、決め手がなかったのが、接戦で競り負けてしまった原因のように思います。打ち合っては勝ち目がないと思ってか、ヒット・アンド・アウェー戦法に徹していましたが、いまひとつ攻め込んでいれば、ポイントが逆になった試合だと思います。
その他の試合では、ファイティング・原田ジム期待の岡崎が、フィリピン人ボクサーを左フック一発で倒し、1RKO勝ちを収めましたが、相手との体重差が6ポンド(約2.4kg)もあり、マッチメイクとしてやや疑問を感じる試合でした。また、6回戦で行われた向井vs大貫戦は、向井がせっかく4Rに倒し返しながら、このラウンド途中で、大貫が2Rに故意でないバッティングで出来た傷が深くなって試合停止となり、2Rに大貫の奪ったダウンが決め手となって2−0の判定で大貫の勝ちとなりました。こういう試合を目の当たりにすると、WBCが採用しているように、停止となったラウンドも採点に加える方が良いのかなと思ってしまいます。もし、4Rを採点に加えていたら、結果は逆になっていただけに、向井としては悔しい敗戦だと思います。
1999年8月7日:後楽園ホール
次の世界チャンピオン候補と言われる西岡が、タイ国チャンピオンを4Rで倒し、東京のファンに実力をアピールしました。
西岡にとっては、95年2月に中村正彦(角海老宝石)に4RKO負けして以来の後楽園ホールのリングということもあり、立ち上がりは多少固さがあったように見えました。最後の詰めは良かったと思いますが、課題も見え隠れした試合だったように思います。今回の試合で気になったのは、やはり相手のパンチを簡単に浴びてしまうことでした。今回の相手のチュワタナが、あまり打ち気でこなかったので救われた面がありましたが、再三チュワタナの右を浴びていました。仲里戦のビデオをも見ましたが、仲里のパンチを食う場面もあり、ディフェンスの甘さを直さないと東洋圏では通用するボクシングかもしれませんが、中南米の選手と戦った場合に思わぬパンチを浴びて倒されるように思います。あと気になったのは、右フックを打つ時に顎の上がる癖があることです。西岡は打たれ強いほうの選手ではないだけに、サウスポーの選手とやる時にはあまり問題がないと思いますが、オーソドックスの選手とやった時には、ちょっと危ないように思います。パンチに自信があるのはわかりますが、それが通用するのは所詮東洋圏でのことであって、世界的にみれば強い方とは言えないでしょう。これから上のレベル勝っていこうとするには、ディフェンスが甘いように思います。
セミファイナルでは日本タイトル再挑戦を狙う木村が、変則ボクサーの阪東タカを最終8Rに捕らえ、レフェリー・ストップによるTKO勝ちを収めました。勝った木村ですが、実力の違いを見せて久々の快勝でした。ただ、一方的に攻めながら、結局ダウンを1度も取れなかったあたりに歯痒さを感じました。敗れた阪東ですが、変則ボクサーの力の限界といえるのかもしれませんが、4回戦、6回戦時代に通用したパンチが最近は全く通用しなくなってしまいました。それと阪東トリオに共通していますが、スタミナがなさすぎます。阪東タカが、これから浮上していくには、スタミナの強化が必要でしょう。変則的なボクシング・スタイルの選手ですから、相手に動き負けないようにならないとこれから上に上がっていけないように思います。
その他の試合では帝拳期待の矢澤が、関西からやってきた小川にいいところなく敗れてしまいました。昨年の新人王で北島大輔(沖)に敗れた時もそうでしたが、相手に先手を取られてしまうと自分のペースに持ち込むことのできない欠点が、出てしまいました。ただ、最初から最後まで同じような試合展開に矢澤自身の問題があるでしょうが、チーフ・セコンドを務めていた葛西が、どんな指示をしていたのか疑問を感じました。いずれにしても、もっとボクシングに柔軟性がでないと、矢澤はこのままで終わってしまうように思います。勝った小川ですが、最近日本ランカーを苦しめているだけあって、ボクシングが巧かったです。ただ、これからランカーになるためには決め手というものが欲しいという感じがしました。
1999年8月6日:後楽園ホール
2月長嶋健吾に10RTKO負けし、一時引退をほのめかした渡辺が、再起戦を2RKO勝ちで飾りました。
この試合だけに限ってみれば、上々の内容ということになるかもしれませんが、渡辺が目指しているリック・吉村への挑戦ということを踏まえた場合、必ずしも次につながったと言える試合ではないように感じました。試合全般を通して感じたのは、以前に比べてパンチに力感がなくなってしまったことでした。ひとつにはスピードがなくなったことが原因でしょうが、もうひとつに踏み込みができなくなっていることに原因があるように見えました。10連続KO勝ちを続け飛ぶ鳥を落とす勢いのあったころの渡辺の最大の特徴は、鋭い踏み込みから放たれる左右フックだったが、その踏み込みがなくなっているように感じました。自分では踏み込んでいるつもりなのかもしれませんが、距離が合わずにフックを振り回して空振りをする場面も見られました。それと、今回の相手が、あまり攻めてこなかったので救われた面があったように思いますが、相変わらず打たせるところがあるのが気になりました。早くリックに挑戦したいということですが、それまでに日本の上位ランカーと一度はグローブを交えて、ディフェンス面がどうなのかというところ見てみたいです。今回の相手が、2階級下の選手であり、積極的に攻めてこなかったということで、渡辺にとってやりやすい相手だったということを割り引いて見ないといけないように思います。
セミファイナルでは5月に再起した堀内が、樽井と対戦。3Rに樽井の目尻を切り裂いてTKO勝ちを収めました。堀内のターゲットは保住のようですが、保住と戦った場合、スピード負けするように思います。樽井クラスの選手であれば、打たせてから打ち返すことができるでしょうが、スピードのある保住ではこの戦法は通用しないと思います。ただ、再起戦と比べると全体的に動きに切れが出てきたことは、この先やや明るい兆しなのかもしれません。
その他の試合では、本田秀伸への挑戦を待つ田中が、タイ人ボクサーを相手に2RKO勝ち。この選手は110ポンドで戦った時は、動きやパンチの切れが抜群に良いです。108ポンドでこの動き、パンチの切れがあれば本田も苦戦すると思います。
また、新人王準々決勝として行われた相内vsゴメス戦は、お互いに倒し倒されの好試合でした。過去2試合は、圧倒的強さで1RKO勝ちを収めていたゴメスですが、ある程度打たれることに慣れている選手とやって持ち前のパンチを我慢されると、案外脆いところがあると思っていましたが、思っていた通りの選手でした。2Rにはダウンを奪われ、ラウンド終了後にはコーナーを間違えるなどパニック状態だっただけに、相内にもチャンスはあったと思うのですが・・・。次に対戦する選手にとって、相内がゴメス攻略法を教えてくれたような試合でした。
1999年8月3日:後楽園ホール
念願の日本タイトルを獲得した保住がメインに登場した興行ですが、この日一番の盛り上がりを見せたのは、西武ライオンズの松坂投手と同級生でインターハイ・チャンピオンの河井のデビュー戦でした。
デビュー戦のわりには落ち着いた戦いぶりで、2R左フックからの連打でダウンを奪いKO勝ちで飾った河井ですが、体つきに締りがなく、プロのミドル級で戦うのはどうかなと感じました。アマで鍛えられているだけに、6回戦くらいまでは勝ち続けるでしょうが、体格的に恵まれているほうではないですから、このクラスで戦うのは厳しい感じがします。2階級から3階級下げて戦うのがベストのように思います。しかし、人材不足の重量級の中では、かなり早い段階で日本ランキング上位に上がってくるように思います。
メインでは保住が、元インドネシア・チャンピオンをボディ攻めで攻略して1RKO勝ちを収めました。日本タイトルを取って自覚ができたのかもしれませんが、今まで見た保住の中では一番良い出来だったように思います。パンチにも動きにも切れがあり、連打もでるなど文句のつけようがない戦いぶりでした。なかなか挑戦者が現れないようで困っているようですが、今回のような戦いぶりでは、挑戦したいという選手はなかなか出てこないかもしれません。とにかくこれからの保住は楽しみだと思います。
セミファイナルでは、突貫小僧阿部が、インドネシア・ランカーをしつこいボディ攻めで崩し、KO勝ちを収めました。阿部のボクシングの特徴は一発のパンチ力に欠けるものの、しつこい連打で相手を攻めることですが、今回もその特徴が出た試合でした。阿部のような選手とやるのは誰も嫌でしょうが、相手のしつこさにどこまで我慢できるかでしょう。日本タイトル奪取が当面の目標のようですが、チャンピオンとしても、阿部はやりたくない選手だと思います。ただ、ひとつ言いたいのは、試合後の下品なパフォーマンスは止めるべきです。勝った喜びの表現はもっと違うかたちでするべきだと思います。
その他の試合では、日本ランクに入った川嶋勝重が、フィリピンのノーランカーに4RKO勝ちを収めました。最後はボディからの連打で倒しましたが、立ち上がりは相手の伸びのあるパンチに戸惑いを見せていました。川嶋を見ていると前に出てくる選手にはいいかもしれませんが、スピードを生かしたアウト・ボクサーには苦戦するように思います。もう少し体から力を抜いて、スピードが出てこないとこれから先は苦しいように思います。
1999年8月2日:後楽園ホール
3月の再起第1戦は1RKO勝ちを収めた吉野の再起第2戦は、1階級下のフィリピンチャンピオンを相手に判定勝ちに終わりました。
今回の吉野は以前の悪い癖である左フックの大振りが目立ちました。吉野本人は試合後のインタビューで、調子が良かったので一発を狙ってしまったと反省していましたが、今後に不安を感じた試合でした。年齢も年齢ですし、一戦一戦が勝負である吉野ですが、左フック生かす意味でも右のストレートをマスターしているという話は聞いていたのですが、実際にはまだ完全にマスターしきれていないように感じました。また、強い左フックを打とうとするあまりに体に力が入りすぎているため、相手のバドの右のストレートを度々貰うなど、ディフェンス面での不安を感じました。右のストレートが打てないのなら、体から力を抜いて、フェイントを使うなどの工夫が欲しかったように思います。いずれにしても左フックに頼るボクシングを変えることができないでしょうから、左フックを生かすためにどんな工夫ができるのかということが吉野にとって大切になってくるように思います。
セミファイナルでは、8勝すべてがKO勝ちという日本ランカー好崎が、ノーランカーでこれが初の10回戦という日下と対戦、持ち前の強打の片鱗は垣間見えたものの、日下のスピードに最後まで翻弄された形での判定負けを喫しました。勝った日下ですが、相手のパンチを恐れずに先手を取ったことが勝因だと思います。ただ、真っ直ぐ下がる癖と相手の正面に立ってガードを下げる癖をなくさないとランカーとして上位に上がっていくのは厳しいと思います。一方敗れた好崎ですが、パンチが凄く伸びる選手だと思いますが、スピードのある選手に脆いところがある感じがしました。それと一発に頼るのではなく、パンチにメリハリをつけてもっと連打できるようになって欲しいと思います。