
1999年5月25日:後楽園ホール
試合前、この試合を予想してみたましたが、正直なところ33歳という年齢に加え、2連敗で虎の子の日本タイトルを失っているベテラン西澤に勝ち目がないと思いました。ところが、結果はダウンを奪っての判定勝ちで、日本人として初めてこのクラスのチャンピオンになりました。
チャンピオンの崔は、プロ入り7戦しか経験していないものの、アマで150戦を経験している選手。3月、宮崎で行われたWBA世界スーパー・フライ級タイトルマッチのセミファイナルに登場し、ダウンを奪われる大苦戦ながらも左のジャブから右のストレートを的確に決めてポイントを稼ぎ、ダウンしたラウンド途中で試合停止となる幸運も手伝って負傷判定勝ちを収めていた。一発のパンチはないものの、身長が193cmもあり、大型選手にしてはスピードもあることから、西澤にとってはやりにくい相手に思えました。ただ、最近の試合では2階級上のクルーザー級のウエイトで試合をすることが多く、この試合が決まったのが僅か1ヶ月前ということで、調整が巧くできるのか疑問は感じていました。
試合は1Rこそ、崔の左のジャブから右のストレートのスピードに西澤が戸惑いを見せ、ポイントを奪いました。ところが2Rからは時折、輪島ばりの蛙飛びを交えながらの西澤の変則的な攻撃に、崔が後手に回るようになりました。中盤は西澤の攻めが冴えを見せ、8Rにはスリップ気味ながらダウンを奪いました。崔もさすがに9R以降猛反撃を見せ、西澤は毎ラウンドのようにダウン寸前に追い込まれるピンチの連続となりました。しかし、崔もあと一発が出ずにチャンス生かせず試合終了となり、2−1の判定で西澤の手が挙がりました。
勝った西澤ですが、8Rまでは満点の出来だったと思います。特に、いきなりの左フック、右のストレートが思った以上にスピードがあり、崔が戸惑いを見せていました。9R以降は、課題のスタミナが切れて、ピンチの連続となりましたが、崔にパンチがないのにも救われて、何とか前半の貯金がものを言って判定勝ちを収めました。1階級上げたこともあって、連敗したパーマー戦、大谷戦と比較しても体が動いていたように思います。ただ、スタミナが切れてからは無理な打ち合いをするなど、ベテラン選手らしくない場面がありました。年齢的にもこれからスタミナがつくとは思いませんが、西澤くらいの選手になれば、もっとヘッドワークを使ったスタミナ配分ができてもいいように思います。これからタイトルを守るためには、スタミナ配分ということが課題になるように思います。
一方敗れた崔ですが、試合が突然決まったところもあり、調整不足という感じがしました。ウエイトが苦しいという話も聞いていましたが、スピードも切れもなかったように思います。攻撃のリズム単調でしたし、西澤の術中にはまった感じがしました。特に前半、もう少しボディを攻めたり、アッパーを使って西澤の体を起こすなどしていれば、終盤KOはできた試合だと思います。崔のこれからですが、ウエイトが苦しいのであれば、ライト・ヘビー級、クルーザー級に上げたほうがいいように思います。また、攻撃面ではボディ・ブローから上に返すなどの攻めのバリエーションを増やす必要があると思います。
セミファイナルでは、4度目のタイトル挑戦を目指す永瀬が、笠木をKOして日本ランク入りしてきた高山と対戦しました。永瀬は昨年11月以来、半年振りの試合でしたが、ベテランらしい落ち着いた戦い方で、高山を圧倒、5R終了時点で、高山が顎を痛めて棄権してしまいました。今回の永瀬は、非常に丁寧な戦い方をしていました。次がラスト・チャンスという思いがあるのかもしれませんが、自分のボクシングに集中している感じがしました。スピードがないだけに加山が相手ではチャンスが少ないと思いますが、今回のようなボクシングをすれば、加山も気が抜けないと思います。一方の高山ですが、勢いで上位を倒すつもりだったかもしれませんが、まだ力不足という感じがしました。笠木を倒したことでパンチに自信を持ったのかもしれませんが、打たれ弱い笠木と打たれ強い永瀬で同じ戦い方をしては勝てないと思います。手を見て戦い方を変えることができないとランキング上位で勝ちつづけるのは難しいと思います。
その他の試合では、4回戦で第1試合に登場した林田に、テレビ・カメラが2台と応援団だ50人くらいついていました。スピードもパンチもあり、試合は1R37秒でKO勝ちを収めました。4回戦クラスの選手では、実力的にもかなり上の選手だと思います。
1999年5月17日:後楽園ホール
メインの日本ライト級タイトルマッチは、最近の両者の戦いぶりから見て挑戦者が勝つ可能性はほとんどないと思っていましたが、チャンピオンのリックが、挑戦者の吉岡を倒せなかったことを除いては、予想通りの結果でした。
まずチャンピオンのリックですが、毎回のようにチャンスを迎えながら結局ダウンすら奪えませんでした。吉岡のパンチが恐かったのかもしれませんが、一気にたたみかければ倒すことはできたように思いますが、リックらしくない詰めの甘さがありました。これで18度目の防衛に成功したリックですが、今のランキングを見る限るでは、防衛記録を達成するのは時間の問題だと思いますが、ややその力に陰りが見えているのも事実で、相手との戦いより衰えとの戦いのほうがリックにとって厄介になるかもしれないと思います。
一方、敗れた吉岡ですが、リック相手にどうやって勝つ気でいたのか、まったくわかりませんでした。リック相手にかきまわしを狙う選手が多い中、正攻法で戦ったといえば聞こえは良いですが、その戦い方を見れば無策と批判されても仕方ないと思います。正直なところ、最近の吉岡は右のストレートが打てなくなってしまったので、リックに勝てるという想像ができませんでしたが、それに加えて手数が出せないようでは、何を練習してきたのだと言いたくなってしまいます。正攻法で戦いたいという吉岡の気持ちはわからないこともありませんが、何か挑戦者らしさというものを見せて欲しかったです。若いからまたチャンスが来るという気持ちがあったのかもしれませんが、今回のような戦い方では次につながるものがありません。とにかく、すべての面で吉岡が、日本タイトルに挑戦する資格があったのか疑問を感じてしまいました。
セミファイナルにはJRAのコマーシャルに出演中の佐藤修が登場。多彩な左でジェイク・カルテを圧倒して1RTKO勝ちを収めました。左をダブル、トリプルで打つなど、成長を感じた試合でした。ただ、左は良かったものの右のストレートがチョップ気味になっていて、もうひとつ力強さがありませんでした。今回は1Rで詰め切ることができましたが、右のパンチ(特にストレート)が打てるようになれば、かなりやるように思います。
1999年5月10日:後楽園ホール
今岡が今まで見た中では、最高の内容の勝ち方をしました。今回こそ、変な試合をしたらインタビューの時、リングから引きずり下ろそうと意気込んでいましたが、見事空振りをさせられました。
今回の今岡ですが、時折悪い癖のクリンチが顔を覗かせていましたが、左のジャブのスピード、右ストレートの正確さは、相手にスピードがなかったことやテクニックがなかったことを差し引いても、評価して良いと思います。最後は左フック一発でKOしましたが、それまでの攻めが良かったから決まったカウンターだと思います。ただ、先に書きましたが、クリンチで逃げすぎのところと、チャンスで畳み掛ける攻撃をするところがなかったので、そのあたりを直して欲しいと思います。いずれにしても、3位というランクに値するかどうかわかりませんが、初めて世界ランカーと呼ぶに相応しい試合をしたと言っていいでしょう。これから今日のようなボクシングが続けられれば、チャンスは自ずとやってくると思います。負けたパンですが、”ハンマー”というニックネームが示す通り、強い左右フックで振ってきましたが、如何せんスピードがなさすぎたように思います。顎にパンチがヒットすればという気持ちがあったのでしょうが、今岡のスピードを殺す意味でも、ボディからの攻めがあれば、また違った展開になったように思います。
セミファイナルには、日本で唯一の暫定チャンピオンという肩書きがついた堀内稔が2年ぶりにリングに復帰しましたが、ピンチヒッターの韓国ランカーに青息吐息のTKO勝ちを収めました。李鉉植は急遽、フィリピン・ボクサーの代打で出場ということで、前日の計量ではウエイト・オーバーでグラブ・ハンディがつくなど全く調整していないの明らかな状態だったため、試合は簡単に決まるかなと思っていましたが、堀内もブランクの影響なのでしょうか(とてもそうは見えなかったが・・・)もたつきチャンスで畳み掛けられない有様。中盤は李も巧いボクシングを見せて抵抗を見せました。最後は李がスタミナ切れを起こしたのに救われましたが、堀内がいくら選手層の薄い重量級と言っても、これからリングで活躍できる明るさが全く感じられなかった試合でした。
もうひとつの10回戦は、今年の2月に1度対戦した内田と川島が対戦。前回の対戦では、内田が判定勝ちを収めていましたが、今回は1Rの川島の強烈な左フックが勝負を決める形となりました。1R終了間際の左フックのダウンでダメージのある内田に対し、川島は一気に攻め落としを狙って猛攻。手の出ない内田を見てレフェリーが試合をストップ。川島がリベンジに成功するとともに、日本ランキング復帰を確実にしました。
1999年5月8日:後楽園ホール
坂本が復帰戦を2RKO勝ちで飾りました。
相手のツナカオは、過去2回日本のリングで判定負けはしているものの、KO負けのない選手で、しかも坂本の右拳の回復が十分でないという話もあったので、KOできるか疑問を感じていましたが、坂本は左を巧く使って最後は右のアッパーから左のフックというコンビネーションで2RKO勝ちを収めました。試合を決めたパンチはコンパクトに打ち抜いたタイミング良いパンチで、今までの坂本には見られないものではありました。ただ、今回の試合を見た限りでは、やはり右拳の回復は遅れているような感じがしました。右を打つのをまだ躊躇っている感じで、このけがの回復があとどの程度かかるかも見極めないといけないと思います。ただ、今回は左を使う練習はしてきた成果はみえました。今回のような左のパンチが打てるようになれば、攻撃の幅が広がるでしょう。しかし、今回の内容で世界を獲れるかということになると、スピード不足のような感じがしました。坂本のターゲットは、WBCチャンピオンのスティーブ・ジョンストンのようですが、前回も捕まえられなかったように、スピードで負けないようにしないと、同じ結果になるように思います。
セミファイナルでは、ジムを移籍して心機一転をはかる元日本ミニマム級チャンピオン、横山啓介が日本ランカーの田中つよしに2RTKO勝ち。今回の横山は全体にスピードがあり、左フックの切れが良かったと思います。一方の田中ですが、調子は良かったように見えました。ただ、前回の鈴木戦でもそうでしたが、無理に打ち合いに行く感じがあり、そこを横山に狙われたように思います。正面から打ち合うのではなく、スピードもある選手ですから左右に動くことを覚えたら、このクラスの選手にしてはパンチもありますから、今のランキング以上の位置で活躍できると思います。
その他の試合では、デビュー以来3試合連続1RKO勝ちを収めている榎洋之が、今年1月の試合で1RKO勝ちを収めている西原に再び、1Rで倒しました。今回のB級トーナメントにエントリーしている選手の中では図抜けた存在だけに、けが等がなければ優勝間違いなしだと思いますし、何試合1RKO勝ちが続くかにも注目したいと思います。
1999年5月7日:後楽園ホール
念願の日本タイトル挑戦が見えてきた福島学が、元フィリピン・バンタム級チャンピオンのアルロスに相手にやや消化不良を感じる試合を行いました。
福島は9月に予定されていた日本タイトル挑戦が破談となってしまったようですが、ランキングは1位ということで、来年1月に予定されているチャンピオン・カーニバルでは念願のタイトル挑戦ができるだけに負けられない試合でした。相手のアルロスはチャンピオン時代、現OPBFバンタム級チャンピオン、ジェス・マカと引き分けた他、1996年7月には当時IBF世界バンタム級チャンピオン、ムブレロ・ボチリ(南アフリカ)に挑戦した(9RTKO負け)ことのあるベテラン選手。福島が歴戦の兵アルロスをどう料理するかに注目していたが、結果はアルロスのディフェンスを崩せず、9RTKO勝ちとなったものの、これで真部とやって勝てるのか疑問を感じる内容でした。一番悪いのは、相手の弱点を徹底的に攻められないことだろう。とにかく4R以降は毎ラウンドのようにKOチャンスを迎えながら、最後のパンチを打ち込めませんでした。相手のアルロスがデフェンシブなボクシングをしたこともありますが、こんな試合をしているようでは粘り強い真部が相手となると、反撃を食ってチャンスがピンチになることも十分考えられる感じでした。福島を見ていていつも感じる歯痒さではありますが、毎回のように同じことの繰り返しで成長を感じられません。それと今回ディフェンス面で目についたことで、不用意に相手の正面に立って、パンチを貰っていたことが気になりました。相手にパンチも連打もなかったので救われましたが、ちょっとディフェンスが疎かすぎる感じがしました。福島はそれなりにパンチもあるし、それなりにスピードもありますが、何か突出したものが感じられません。今のままではタイトルに挑戦は出来ても、獲ることは難しいように思います。
セミファイナルでは昨年の全日本新人王の佐々木真吾が、竹内を得意のワンツーで秒殺しました。竹内がやや固かったこともありますが、佐々木のパンチが切れていました。ちょっとこの先が楽しみな感じがしました。
6回戦ではJBスポーツの土門が、一か八かの攻めが決まって大逆転の最終ラウンドKO勝ち。折原にとっては痛恨としか言いようのない試合でした。ある意味ボクシングの面白さが出た試合ではありましたが、お互いにこれから先が明るいといえる感じはしませんでした。また、3試合行われたB級トーナメントの試合では目立った選手はいませんでしたが、負けた選手は勿論ですが、勝った選手にしてもディフェンスが悪すぎるのが気になりました。