1999年10月15日:後楽園ホール

 デュランが急病で来日を取りやめたこともあったのかもしれませんが、世界タイトルマッチ挑戦経験者が出場した10回戦が行われる興行としては、寂しい会場の入りでした。
 メインエベントとなった八尋vs姜の試合は、この試合が1年7ヶ月ぶりの試合となる八尋が、ブランクを感じさせない動きで要所を抑え、3−0の判定で勝利を収め再起を飾りました。
 勝った八尋ですが、1年7ヶ月ぶりの試合にしては、ブランクによる試合勘の鈍りはなかったと思います。特に前半は左のパンチを有効に使って、相手の姜の接近を巧くさばいていました。しかし、気になったのは良い左を打ちながら、追い打ちの右のストレートが出ないため、姜からダウンを奪うことできなかったことでした。たまに見せる右も腕が伸びないため、相手にダメージを与えるまでには至りませんでした。左ジャブに続いて右のパンチの打たない(打てない?)八尋を見ていると、何のために左ジャブを打っているのかと問いたくなってしまいます。左が出ると右が出ず、右を打とうとすると左が出ないというボクシングにややフラストレーションを感じた試合でした。以前の八尋は一発のパンチには威力がないものの、連打で相手を倒していましたが、今回のボクシングを見る限りでは、ブランクの影響があるのかもしれませんが、攻めがバラバラという感じがしました。また、中盤以降左のパンチが減って距離が詰まった時に、姜の左右フックを浴びる場面が、数多く見られました。この辺りもブランクの影響なのかもしれませんが、姜にも一発パンチがなかったことに救われたとも言えますが、ディフェンス面にも不安を感じました。課題も多く見られた試合ではありましたが、ブランクを考えれば良とすべき試合だと思います。年齢的にも、一戦一戦が勝負となる八尋の今後に注目したいと思います。
 セミファイナルとなった池森vs松原の8回戦は、パワーに勝る池森が3Rに2度のダウンを奪ってKO勝ちを収めました。勝った池森ですが、相手が格下ということもあって楽な気持ちで戦えたこともあるのでしょうが、伸び伸びとしたボクシングで松原を圧倒していました。3R中盤にダウンを奪ったあと、やや詰めにややもたつきましたが、倒しきったことで今後に自信がついたように思います。敗れた松原ですが、元日本ランカーの池森が相手では、まだ荷が重かったかなと思いました。持ち味であるスピードを生かしたボクシングができれば、池森も苦戦すると思ったのですが、池森のパワーに押し切られてしまいました。松原はスピードもテクニックも持ち合せている選手ですので、もう少し経験を積めば、必ず日本ランキングに入ってくる選手だと思います。
 その他の6試合はすべて4回戦でしたが、その最後に行われた佐久間vs石毛の試合は、館レフェリーのミスによって、佐久間は勝てる試合を落とす結果となりました。問題の場面は、1R終盤に起こりました。佐久間は1Rにダウンを奪って優勢に試合を進めていましたが、ラウンド終了間際に、佐久間の体がロープから出掛かったところで、館レフェリーが試合をストップかけるのが遅れて、石毛のパンチが体勢の崩れた佐久間にまともにヒットして佐久間がダウン。館レフェリーはストップをかけた後のパンチということで、ダウンとは認めませんでした。佐久間が立ちあがったところでラウンド終了のゴングとなりました。不正な攻撃でダウンを受けたのですから、当然適当なインターバルが与えられるべきなのに、館レフェリーは通常の1分のインターバルしか与えずに2Rを開始、ダメージがある佐久間はダウンを喫してしまいました。このラウンドは逃げ切ったものの、結局判定負けとなってしまいました。ダウンによるダメージを受けなければ佐久間が勝てた試合だと思います。少なくともレフェリーが3分間でも休憩を与えていれば、結果は違った試合でした。セコンドもルーティン作業に追われてしまって、インターバルの延長を主張しなかったこともありますが、あの場面は、明らかにレフェリーのミスで起きたことだけに、それなり配慮があってもいいと思いました。

1999年10月12日:後楽園ホール

 柳光vs金石の日本スーパー・フライ級タイトルマッチは、予想に反して立ち上がりから打ち合いとなったものの、2Rに偶然のバッティングにより柳光の傷が深く試合停止となり、テクニカル・ドローという結果に終わりました。
 タイトルを守った柳光ですが、6月に松倉をKOしたことが自信になったのか、柳光らしくないボクシングで、金石から2度のダウン(1回はレフェリーがスリップとジャッジした)を奪いました。ただ、パンチを強く振っていた分バランスが悪く、顎を上げて攻めていたため、ヒヤリとする場面も多く見られました。倒そうという気持ちはわかりますが、もう少しじっくり攻めても良かったように思います。けがのため練習不足でスタミナが十分でないなどの理由があれば別の話ではありますが・・・・たらればの話になってしまいますが、今回の試合運びで試合が長引いたとすれば、逆転されていたように思います。1Rにダウンを奪い、2Rも攻勢をとっていただけに柳光としては悔しい結果だったように思います。いずれにしても、柳光が今回のような試合をするようでは、長くタイトルを守るのは難しいように思います。柳光vs金石の試合が、来年のチャンピオン・カーニバルで再戦になると思いますが、柳光が無理にKOを狙わずに本来のアウト・ボクシングができれば、楽々勝てるように思います。
 一方、バッティングによる負傷引き分けでタイトル奪取に失敗した金石ですが、試合停止となるまでの流れからすると、こちらは負傷引き分けになってタイトル挑戦権が残ったという意味でラッキーな結果だったと思います。柳光のスピードについていけない感じでしたし、パンチにも威力を感じませんでした。柳光の勢いに面食らった面があったのかもしれませんが、何も策がなかったように見えました。恐らくこの両者は、すぐ再戦となるでしょうが、金石としては、柳光のスピードに対する対策が必要だと思います。
 セミファイナルでは、空位となるOPBFタイトルの王座決定戦出場が予定されている田中光輝が、フィリピンのノーランカーに3RKO勝ちを収めました。ただ、出来としてはあまり良くなかったように思います。いつもならもっと細かくパンチが出るのですが、一発狙いだったのか右のストレートが流れてしまい、なかなかクリーン・ヒットを奪えませんでした。今回の出来では、OPBFタイトル奪取は難しいような感じがしました。それとここ1年あまり、ライト・フライ級で戦っていないことも不安材料のように思います。前回、108ポンドで戦った時は(といってもこのウエイトで戦ったのは後にも先にも1試合しかないのだが・・・)、動きに切れ・スピードともになかったですし、スタミナも終盤はきれていたように見えました。ここ1年はずっと110ポンド契約で戦って結果を残していますけど、108ポンドで今までのような動きができるか正直言って疑問です。108ポンドの試合で、今までのようなパワー、スピード、スタミナ(最近は早い回のKO勝ちばかりなので、これが一番不安材料)が維持できるかが、タイトルを獲るためのキー・ポイントのように思います。

1999年10月11日:後楽園ホール 

 今岡が世界ランカーのウィービーに8RKOで敗れタイトルを失いました。
 試合自体は7Rまで、細かなパンチを決めていた今岡がリードしていた試合でした。ウィービーは大きなパンチを振って前に出るものの的確性に欠いていて、このままのペースでいけば今岡の勝ちだろうと思っていた矢先、コーナーに詰まってそれまでかわしていたウィービーの右ストレートをまともに食って崩れるようにダウン、何とか立ったもののカウント・アウトされました。
 5度目の防衛に失敗した今岡ですが、正直なところKO負けでタイトルを失うとは思いませんでした。敗因は相手のペースに合わせてしまったところでしょう。相手のウィービーが、立ち上がりから大きなパンチ振って前に出てきたのに合わせて、今岡も大きなパンチを振って応戦していました。ときおり、気がついたように細かなパンチを決めてポイントは取っていましたが、今岡のボクシングをしている感じはしませんでした。そして8R、ウィービーの突進にそれまでパンチをかわしていた今岡が、まともにパンチを浴びるようになり、最後は右ストレートを浴びてKO負けとなりました。相手の大きなパンチに合わせないで、今岡本来のボクシングである左ジャブでリズムを取りながら攻めていれば、KO勝ちはできなかったとしても、楽々判定勝ちはできた試合だったように思います。世界ランキングが2位まで上がり、世界タイトル挑戦の話がちらつき始めたことが、今岡のペースを乱したのかもしれませんが、勝てる試合を、自分で失った感じのした試合でした。
 セミファイナルでは、昨年のウエルター級全日本新人王、安田鉄平が、ベテランの大原と対戦、見所のないラウンドの連続で、的確にパンチをヒットした安田が判定勝ちを収めました。勝った安田ですが、パンチがなさすぎます。いつもそうですが、ファンが納得するようなファイトも見られません。はっきり言ってプロの選手としては失格といわざるをえません。何かプロとして見所がある選手になって欲しいです。今のままでは早めにプロとしての見切りをつけた方が本人のためのように思います。負けた大原ですが、頑張りは認めますが、相手に合わせないで、自分からもっと攻めて欲しかったように思います。相手の動きを止めるのに、ボディを打つとか、コーナーに追い込むとかすれば勝てた試合だったように思います。
 その他の試合では、5月に対戦している井出vs鈴木が再び対戦。5月に1RKO負けした鈴木が2RKO勝ちを収め、リベンジを果たしました。ただ、ランカー同士の試合にしては、低レベルの試合で、お互いにまだまだチャンピオンの保住と戦うには力不足のように感じました。また、6回戦で行われた斉藤vs朝山は、朝山が終始攻勢をとり、4Rに右のフックでダウンを奪い、5Rにレフェリー・ストップで勝利を収めました。

1999年10月2日:後楽園ホール

 OPBFタイトルを返上して、世界タイトル挑戦にターゲットを絞った長嶋が、韓国フェザー級チャンピオンの成に大差判定勝ちを収めました。
 試合は序盤、成の右フックが長嶋の顔面を的確に捉えて、ヒヤリとする場面もありました。長嶋がペースを握ったのは5Rくらいからで、左のボディ・ブローからペースを握り、成のスタミナが切れたこともあって終盤は長嶋のほぼ一方的ペースとなりました。最後までダウン・シーンはなく、ジャッジの採点は4点差、5点差(2人)で長嶋の手が挙がりました。
 勝った長嶋ですが、久しぶりにウエイトが128ポンドで戦うこともあり、動きがどうかなと思っていましたが、いつもと変わらないスピードがあり、ダウンは奪えなかったもののパンチにも切れがあったので、まずまず合格点の試合だったと思います。ただ、1Rに相手の右フックでバランスを崩すなど、ディフェンス面での不安が、相変わらず顔を覗かせました。ここ数試合はいずれも1回はピンチの場面があり、今回の成にパンチがないので救われた感じがしますが、あまりにも不用意にパンチを浴びすぎるように思います。世界タイトルを獲るためにボクシング・スタイルを変えているようですが、以前に比べて全体的にボクシングが雑になっている感じがします。打たれることもそうですが、連打がなく一発を狙いすぎてコンビネーション・ブローが打てないのも気になりました。来年には世界タイトル挑戦を目論んでいる長嶋ですが、まだまだ課題が多くあるように思います。私は焦らずじっくりチャンスを待ってもいいように思うのですが・・・
 一方敗れた成ですが、現役の韓国チャンピオンで、聞こえてくる評判は良いものばかりだったので、長嶋ももっと苦戦するかと思っていましたが、初の海外での試合ということで力が出なかったのかもしれませんが、平均的な日本チャンピオンくらいの選手でした。序盤に見せたタイミングの良い右のフックは恐い感じがしましたが、攻めがワンパターンで、攻略しやすい感じがしました。ボディも弱い感じで、長嶋にボディを攻められてスタミナを失い、終盤は手数も減ってしまいました。越本や今岡も楽々勝てる選手だと思いました。
 セミファイナルでは、4月に日本タイトル失った大谷が、一階級下のスーパー・ウエルター級でのタイトル挑戦を睨みながら、韓国ランカーを相手に再起戦を行いました。1Rは朴のプレッシャーに大谷は防戦一方となりましたが、冷静に朴の動きを見て、徐々にペースを奪い返しました。2Rからは、大谷が朴のボディを巧く攻め、試合のペースは大谷のものとなり終了間際、大谷が右のショート・ストレートでダウンを奪いました。そして3R、大谷の左ボディ・ブローで朴がダウン。立ち上がったもののレフェリーがカウント・アウトしました。勝った大谷ですが、再起戦ということもあって、1Rにはやや固さがあったように思いますが、冷静に相手の動きを見れたことが勝因でしょう。ガードの甘さが気にはなりますが、ミドル級でやるにしても、スーパー・ウエルター級でやるにしても、パンチのある選手ですから、チャンピオンにとっては恐い存在でしょう。ただ、年齢的にはそんなにチャンスはないと思いますので、1試合1試合を大切に戦って欲しいと思います。
 その他の試合では、日本ランカー同士の対決となった8回戦は、ベテランの吉田が、大里の攻勢に手を焼きながらも、巧くポイントを拾って2−1の判定勝ちを収めました。お互いに手数が出てましたが、今一つ威力がなく、決定的なチャンスがない試合となりました。勝った吉田ですが、ベテランらしく相手の大里が、ガードを下げて接近してくるところを巧くついていました。ただ、如何せんパンチに威力、切れともなく、相手に決定的なダメージを与えるところまで至りませんでした。ランキングも再び5位まで浮上してきてはいますが、決め手がない選手だけに、タイトル獲得のチャンスは少ないように思います。敗れた大里ですが、攻めている時はいいものがあるのですが、守りに回るとガードの甘さを吉田につかれてしまいました。それとこの選手の課題は、スタミナだと思います。中盤スタミナ切れのために、無理に接近戦にいったことが、相手にポイントを取られる結果になったように思います。もう1試合行われた8回戦は、昨年のB級トーナメント準優勝者の金田が、昨年東日本新人王の草野からダウンを奪って5R負傷判定勝ちを収めました。ピンチとチャンスが交互に訪れる激しい試合となりましたが、ピンチで我慢のできた金田が勝ったというような感じの試合でした。